家づくりに大切な地震対策!(応用編)
「耐震等級」「構造計算(許容応力度計算)」「地震保険」についてまとめた記事です。
地震対策において知っておくべき、少し専門的な知識について解説しています。今後家づくりを始める方は、事前知識を身につけて後悔のない地震対策が必要です。
地震対策を検討していくなかでは、よく専門用語が出てくることがあります。
じつは地震対策についてこの専門用語を知っておくことは、皆様が損をしないためにも非常に大切です。
後編では応用編として、地震対策にまつわる少し専門的な知識について解説していきます。
ちょっとした理解の違いで損をしないように、ぜひ最後まで読み進めてください。
それでは今回の記事の結論です。
今回の記事の結論
・耐震等級とは第三者機関から検査と認定を受けて、初めて取得できる
・建築基準法を守った家とさらに耐震等級3を取得した家では、熊本地震でその被害に大きく差が出た
・2階建て以下の木造住宅では、詳細な許容応力度計算(構造計算)と簡易な壁量計算どちらでも確認申請が可能。
・家の耐震性高めるためには、上下階のバランスまで確認する許容応力度計算が必要
・地震保険は「地震」「噴火」「津波」の被害を補償する、火災保険の一部
・耐震等級3を取得することで、地震保険が50%OFFになる
地震対策の基本!耐震等級とは
地震対策について、もっとも重要な性能は耐震等級です。
じつは耐震等級については、誤解もまだまだ多いので、ここでは耐震等級について詳しく解説していきます。
耐震等級とは第三者機関から認定を受けること
耐震等級とは、品確法(住宅品質確保促進法)という法律で定められた性能の一つで、第三者機関の認定があって初めて取得できます。
等級は1~3までの3段階で設定されており、等級3が最高等級となります。
耐震等級を取得するメリットは2つあります。
・耐震等級を高めることで、地震の被害を抑えることができる
・第三者機関が設計(図面)と施工(現物)両方を検査してくれるので安心感がある
特に2つめの第三者機関のチェックはとても重要です。
建て主は家の専門家では無いので、家の耐震設計が十分なのか、正しく施工されているのかを確認するのは難しいです。
これを第三者機関の専門家が確実にチェックしてくれることで、本当の意味での耐震対策が取れていることになります。
チェックが完了した家には、下記のようなロゴが付いた評価書が発行されます。
よく「耐震等級3相当」という言葉がありますが、これは第三者機関の認定を取っていないもので、第三者機関の検査を受けていないことになります。
大きく違う、耐震等級毎の被害状況
実は最新の建築基準法を守った家でも、耐震等級によって被害の状況が大きく違うことが確認されています。
出典:国土交通省熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント
上の図の通り2016年に起きた熊本地震のとき、建築基準法レベル(耐震等級1相当)の住宅では3割以上の住宅で損傷や倒壊があったのに対し、等級3は損傷が12%・倒壊は0件で、その効果を証明しました。
耐震等級が違うことで被害状況に大きな差が出ることが分かります。
地震後にも住み続けるには等級3が大切
地震の時に倒壊を防ぐだけでなく、その後も住み続けることを考えると、建築基準法以上の
耐震性がある、耐震等級3の取得が大切です。
なぜなら建築基準法では命を守るための倒壊防止が前提となっており、生活を続けるための損傷防止はあまり重要視されていないからです。
耐震等級と強度の関係
等級1:建築基準法で定める最低基準
等級2:1に対して1.25倍の耐震性
等級3:1に対して1.5倍の耐震性
耐震等級3は建築基準法の1.5倍の強度があるため、新潟中越地震・熊本地震においても、無被害の住宅が多くありました。
地震後も極力無被害に抑えて、大きな出費なく住み続けられる家にするには耐震等級3をおすすめします。
耐震設計の基本!構造計算とは?
耐震設計をするためにとても大切なのが「構造計算」です。
しかし家を建てられる方で、「構造計算は必須なのか?」「そもそも何を確認しているのか?」と聞かれて、答えられる方は少ないのではないでしょうか。
ここからはそんなよく聞くけどよく分からない構造計算について、詳しく解説をしていきます。
新築時に行われる構造計算とは?
家を建てるときには家の耐震性を検証しますが、その時に使われるのが構造計算です。
構造計算とは各家ごとに、地震・風・雪・人間などあらゆる荷重に対して柱・壁・床・梁などの構造材が耐えられるかを計算します。
ただし、日本の住宅には「4号特例」と呼ばれる法律があり、この構造計算が免除できるパターンがあります。
4号特例の内容
対象住宅:木造 2階建て以下 延べ床500㎡(154坪)以下 軒高9m以下
耐震計算:構造計算を簡素化した壁量計算での申請可能
構造審査:建築士が責任をもって設計していることを前提に、審査機関での審査はなし
対象住宅の条件を見て頂くと分かるとおり、日本のほとんどの木造住宅が含まれるため、多くの会社では構造計算でなく4号特例に合わせた壁量計算が行われています。
次項では構造計算(許容応力度計算)と壁量計算の違いと、構造計算の重要性について解説します。
構造計算(許容応力度計算)の重要性
構造計算の方法の一つとして「許容応力度計算」というものがあり、これが住宅で使われる主流のものとなっています。
許容応力度計算では柱1本1本、金具一つ一つに掛かる負荷を計算するのに対して、
壁量計算では必要な耐力壁の量を決め、その壁量を満たしているかで安全性を確かめます。
この場合に、大きな差が出てくるポイントは、荷重計算と構造のバランスです。
許容応力度計算では各家ごとにかかる負荷を計算して、地震や風が吹いたときにどこにどれだけ負荷が掛かるかを詳細に計算するので、各部材に必要な強度を明確に確かめることができます。
構造のバランスという面では、壁量計算が各フロアごとで構造の配置を考えるのに対して、許容応力度計算は上下階の構造の配置も見たうえで、部材に掛かる力を計算します。
構造のバランスが悪いと、特定の場所だけ極端に力が掛かってしまうことがあるので、上下階のバランスを確認するのは非常に大切です。
4号特例の縮小で必須となる構造計算
ここまで壁量計算と構造計算の違いを見てきましたが、実は2025年から「4号特例の縮小」で壁量計算で申請できる住宅の規模が大幅に縮小されます。
具体的にいうと、2025年以降は2階建て以上の木造住宅では必ず構造計算書の提出が必須となります。
今後は構造計算が前提となる時代がやってきますので、今から家を建てられる方はぜひ構造計算の実施を検討しましょう。
地震保険の基本!見落としがちな割引や補償範囲とは?
地震保険で受けられる補償の範囲
地震保険とは火災保険の一種で、「地震」「噴火」「津波」の3つの災害に対する被害が補償されます。
設定金額は火災保険の30~50%までで、建物最大5,000万円/家財最大1,000万円まで設定できます。
耐震等級で受けられる地震保険の割引
耐震等級を取得することで、下記の表のとおり地震保険の割引を受けることができます。
耐震等級以外にも長期優良住宅であれば免震住宅または耐震等級1以上なので、長期優良住宅の認定書で、地震保険の割引を受けることができます。
また地震保険ではありませんが、省令準耐火構造では火災保険の割引を受けることができますので、詳しくはそれぞれの住宅会社に対応しているかお尋ねください。
まとめ
今回は地震対策の応用編として、耐震等級・構造計算・地震保険について解説しました。
地震対策で後悔がないように、ぜひ本記事の情報を参考にしていえづくりに取り組んでください。
それでは今回の記事のまとめです。
- 耐震等級を取得すると第三者機関の検査を受けられるため、耐震性能の確実性があがる
- 地震後も住み続けられる家にするには、耐震等級3の取得が有効
- 2階建以下の木造住宅では簡易な壁量計算が可能だが、耐震性を高めるには荷重や上下階の構造バランスまで計算している計算構造計算が大切
- 地震保険は「地震」「噴火」「津波」の被害を補償する、火災保険の一部
- 地震保険の割引は耐震等級または長期優良住宅の認定で受けられる