自然災害に強い家とは?土地と家から考える災害対策(前編)

住宅における自然災害への対策をまとめた記事です。前編では災害に強い土地の選び方や調査方法、災害対策を意識した住宅づくりを解説します。特にこれから新築を建てられる方は、災害が起きてから後悔しないように事前に知識をつけて家づくりに挑んで下さい。

近年自然災害が増え続けており、家を建てる時に地震や水害のことを気にする方は多いのではないでしょうか。

将来の家族の安心を守るために災害対策という視点は、家づくりでとても重要な視点です。

今回の記事では災害対策に大切な土地の考え方を、前編・後編で解説していきます。

前編はまず災害の被害を受けづらい土地選びと家づくりについてです。

今回の記事を参考にしながら、土地探しや家づくりの参考にしてください。

それでは今回の記事の結論です。

今回の記事の結論

・災害は近年確実に増え続けており、特に風水害の被害が増えている
・災害対策で大切なのは安全な土地・頑丈な構造・安心な設備
・地盤の強さは、地名などをヒントに土地の成り立ちを調べることが有効
・土地の安全性は「大規模盛土造成地マップ」「ハザードマップ」を上手く活用する
・災害の被害を少なくするためには、耐震等級が高い頑丈な構造の家が大切
・ライフラインの寸断に備えた設備を導入しておくのも大切

1.避けては通れない災害対策

近年、災害のニュースが多くなってきており、災害が増えているという認識の方は多いのではないでしょうか?

一方で具体的な数字でどれくらい災害が増えているかを、知っている人は少ないと思います。

1-1.毎年増え続ける自然災害

今の日本は昔に比べて、確実に自然災害の件数が増えています。


出典:一般社団法人日本損害保険協会

上の図は2010年以降、損害保険会社が自然災害(地震を除く)を理由に支払った保険金の推移です。

図を見て頂くと分かる通り、年ごとに多い少ないはありますが、全体として増加傾向にあります。

つまりこれからの時代は、災害が起きていなかった地域や前の災害から長く期間が空いている地域でも災害が起こる可能性が高くなっています。

同じ家に数十年間住み続けることを考えると、家を建てる時に災害対策を考えるのは必須と言えるでしょう。

1-2.特に注意すべきは地震と水害

近年起きている災害で激甚化するのは主に地震と水害です。

特に近年は水害の発生件数が非常に増えてきていますので、地震と合わせて水害対策も重要な要素となっています。

1-3.災害対策に大切なのは安全な土地・構造・設備

災害対策に大切な考え方は、浸水・倒壊など直接的な被害を受けないこと、ライフラインが断たれても生活を継続することの2つです。

そのためには、災害対策に適した土地・構造・設備を選ぶことが大切です。

とくに安定した土地選びと頑丈な構造は、直接的な被害を抑えるためにとても重要です。

次に災害時に活躍する安心な設備を選ぶことで、ライフラインが断たれたときにも、いつも通りの生活が送りやすくなります。

2.自然災害に配慮した土地の選び方とは

災害に強い安定した土地の条件として3つのことがあります。

・地盤が強いこと

・地滑りなどの危険が少ないこと

・河川の氾濫など水害の危険がすくないこと

ここではそうした自然災害に強い土地の選び方を解説していきます。

2-1.地盤の強さを確認する方法:地名から土地の成り立ちを調べる

地盤の強さを確認するには、土地の地名から成り立ちを調べるのが有効です。

例えば「渚・沼・沢・谷」など水や窪地を連想させる名前は、低地で水が溜まりやすい土地で、過去に湿地や池・川だった場合があります。

そうした場所は、宅地や商業地に変わった後も全体的に地盤が弱い可能性があります。

土地の背景を調べるには「古地図」を調べる方法があります。

古地図は図書館などにありますが、対象範囲であれば下記のサイトでも確認が可能です。

今昔マップ on the web

2-2.地滑りの危険を確認する方法:大規模盛土造成地マップ

地盤の強い土地でも、盛土や切土など人工的に土地を造成している場合は注意が必要です。

すべての盛土地域が危険というわけではありませんが、過去の地震において盛土の境界などで地滑りが発生しているため、国土交通省より各自治体へ安全性の確認が指示されています。

盛土地域の場所と安全性の確認には「大規模盛土造成地マップ」が有効です。

市区町村ごとに盛土の有無とその安定性を調査した結果が載っています。

2-3.水害の危険を確認する:ハザードマップを確認する

水害の危険性を確認するには、各地域のハザードマップが便利です。

各市区町村毎に発行しており、検討している土地の水害危険度を確認することができます。

ハザードマップを確認して、極力浸水深度が浅い土地を選びましょう。


出典:葛飾区ハザードマップ

ハザードマップは川からの近さだけでなく、土地の高低差も含めて危険度を表しているので、隠れた危険地域も発見しやすくなっています。

3.災害に強い家の構造とは

災害の直接的な被害を受けない為には、家の構造も非常に重要です。

とくに耐震と耐水害対策は家の構造で対応しておくべき内容です。

3-1.耐震の基本は耐震等級

耐震等級とはその名の通り、地震への強さを示す性能です。

等級1~3で分かれており、等級3が最も耐震性能が高く安心です。

等級1:建築基準法で定める最低基準
等級2:1に対して1.25倍の耐震性
等級3:1に対して1.5倍の耐震性

耐震等級は「住宅性能評価機関」で認定を受ける必要があります。

認定を受けると下記のマークが付いた性能評価書が発行されます。


出典:一般社団法人住宅性能評価・表示協会

よく住宅会社の広告では「耐震等級3相当」という文面が出てきますが、

これは上記の性能評価を受けていない、住宅会社の自己判断となります。

耐震への安心感を高めるためには、しっかりと第三者期間の認定を受けることをオススメします。

3-2.水害対策は止水板と基礎のかさ上げが基本対策

水害対策の基本は水を止めること、沈まない高さにすることの2つです。


出典:ヤマダホームズ水害対策仕様


家の外側の塀を設けることが可能であればその塀で家を囲い、出入口は止水板で閉じれるようにしておくことで、水の侵入対策が可能です。

また塀などの対策が不可な場合や、2重に対策する方は基礎高を上げる設計をしましょう。

高さの目安は、ハザードマップに記載された予想水位を参考にするといいでしょう。

そのほかにも住宅会社各社で、浸水しづらいサッシを使うなど異なる対策をしているので、各社の対策は確認をオススメします。

4.災害に強い家の設備とは


災害対策の基本はライフラインが断たれても生活を継続することです。

水や食料などの備蓄がそれに当たりますが、今は家の設備でも対策が可能です。

詳細は後編で解説していきますが、災害時に生活を継続するには、給水・給湯・給電ができることが大切です。

感染症の拡大で避難所生活のリスクが大きく高まったため、家に住み続けられることは非常に重要になっています。

設備で災害対策をすることで、もしもの災害に備えましょう。

5. まとめ

今回は災害対策の重要性と、その対策方法について解説しました。

まずは土地と家の構造で災害対策をすることで、直接的な被害を防ぐ対策を検討しましょう。

後編では生活を継続するための設備について解説していきます。

それでは今回の記事のまとめです。

  • 風水害を中心に、近年災害は増え続けている
  • 災害対策で大切なのは安全な土地・頑丈な構造・安心の設備
  • 地盤の強さは、地名などをヒントに土地の成り立ちを調べる
  • 造成地の場所や安全性は「大規模盛土造成地マップ」で確認する
  • 水害の危険度は「ハザードマップ」を活用する
  • 災害の被害を少なくするために、耐震等級が高い頑丈な構造の家が大切
  • 耐震等級は第三者機関の認証が必要
  • 災害時の生活継続には、給水・給湯・給電ができる設備が大切
澤村知範

この記事を書いた人

澤村知範
オウチの学校代表

これまでの多くの住宅取材経験と自らが建築に関わってきたスキルの集大成として、家づくりの成功メソッド「オウチの学校」を設立。