住宅の性能比較と家づくりに大事な視点(前編)
最近では国の政策の後押しもあり、高性能住宅が当たり前になってきました。
それにともない、家の性能値を公表する住宅会社が増えています。
そこで住宅会社の比較に迷った際には、住宅性能で比較してみるというのも一つの選択肢です。
この記事では住宅性能の比較方法と、もう一歩踏み込んだ家づくりに大事な視点を解説します。
まずは前編として性能値の見かたや目的、そしてそのメリット・デメリットを紹介していきます。
まずは今回の記事のポイントです。
今回の記事のポイント
・耐震等級を取得することで、地震に対する安全性が増す
・断熱性能は省エネ性と快適性に大きく影響する
・気密性能を上げることで快適性が上がり、家の寿命も伸ばすことができる
1.耐震性能の比較ポイント
最初に解説するのは耐震性についてです。
熊本地震や東日本大震災など、日本であればどこでも地震のリスクがあります。
ここではそんな地震に備えた耐震性能を解説していきます。
1-1. 耐震等級とは
耐震等級とはその名の通り、地震に対する強さを表す性能値です。
耐震等級は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で定められています。
1~3の等級で区分けされており、3が最高等級になります。
耐震等級の区分け
- 等級1:建築基準法で定める最低基準
- 等級2:1に対して1.25倍の耐震性
- 等級3:1に対して1.5倍の耐震性
耐震等級は国で定められた性能評価機関による評価を受けて、初めて取得することができます。
耐震等級を取得した家には、上記のロゴが付いた評価書が発行されます。
1-2. 耐震等級を取る目的とメリット
耐震等級をとる目的とメリットは以下の3つです。
・地震に対する安心、安全
・ローン金利を抑える
・地震保険の割引
地震に対する安心、安全
耐震等級を取ることは、もしもの地震に備えた大きな安心感につながります。
2016年に発生した熊本地震では、耐震等級3の家は無被害(大きな損傷も無かった)87.5%、軽微な損傷:12.5%、大きな損傷や倒壊:0%とその強さを証明しました。
ローン金利を抑える
住宅金融支援機構が実施しているフラット35では、耐震等級を取ることにより金利を下げることができます。
耐震等級2で5年間、耐震等級3で10年間、金利が▲0.25%となります。
出典:住宅金融支援機構HP
地震保険の割引
耐震等級を取得することで、地震保険の割引も大きくなります。
一般的には下記の利率で割引されます。
・耐震等級3:基準価格の▲50%
・耐震等級2:基準価格の▲30%
・耐震等級1:基準価格の▲10%
1-3. 耐震等級を取るデメリット
耐震等級を取得することによるデメリットは、間取りの制限や建築費用の増加、性能評価を受けるために必要な申請手数料などの増加です。
耐震等級を取るためには、頑丈な構造とその配置のバランスが求められます。この時に犠牲になってしまうのが間取りです。
耐震等級を優先すると広い空間が取りづらくなるため、リビングを広くできなかったりに柱や壁ができてしまったりします。
また建物を頑丈にするということは、頑丈な構造材を使うか、構造材の量を増やす必要があります。
どちらも材料の費用が増えてしまうため、それだけ建築費用が増加します。
2.断熱性能の比較ポイント
暖かく省エネな家を作るためには断熱性能は重要なポイントです。
断熱性能は比較的公表している住宅会社が多いので、ぜひ押さえてください。
2-1. 断熱性能を表すUA値とは
断熱性能はUA値(単位:W/(㎡・K))という値で表示されます。
出典:国土交通省住宅局
UA値は数字が低いほど断熱性能が高くなります。
H28年省エネ基準 | 0.87W/(㎡・K) | 一般的な水準 |
ZEH基準 | 0.6W/(㎡・K) | 高性能住宅の入口 |
HETA20 G2 | 0.46W/(㎡・K) | 超高性能住宅 |
各住宅会社が出しているUA値と上の表を見比べると、おおまかな住宅性能のレベル感がわかります。
2-2. 断熱性能を上げる目的とメリット
断熱性能の目的は、家の省エネ性と快適性を上げることです。
省エネ性の面では、断熱性があがることでエアコンなどの冷暖房費用が大幅に抑えられます。
快適性の面では、熱が逃げないことで家全体が均質に暖まり、温度差の少ない快適な家にできます。
2-3. 断熱性能を上げるデメリット
断熱性能を上げるデメリットは建築費用の増加と家の窓が減ってしまうことです。
断熱性能を上げるためには性能のいい「窓」と「断熱材」が必要なので、コストアップにつながります。
また、家の中でもっとも熱が逃げる場所は「窓」です。
断熱性を上げようとすると、どうしても窓のサイズやデザインに制限が出てきてしまいます。
3.気密性能の比較ポイント
気密性能は「高気密高断熱住宅」という言葉があるとおり、断熱性と同じく大事な性能です。
ここでは気密性能を上げることのメリット・デメリットを解説していきます。
3-1.気密性能を表す C値とは
気密性能はC値という値で表します。
C値は、家全体でどれくらいの隙間があるかを表しており、C値が低いほど隙間が少ない家と言えます。
C値の目安は下記の通りです。
項目 | C値 |
---|---|
H11年省エネ基準(現在は廃止) | 5cm2/m2 以下 |
高気密住宅 | 1cm2/m2 以下 |
超高気密住宅 | 0.5cm2/m2 以下 |
3-2. 気密性能を上げる目的とメリット
気密性能を上げるメリットは二つあります。1つは暖かさ(涼しさ)を逃がさないこと。
もう1つは家を長持ちさせることです。気密性能を上げると、いわゆる「すきま風」が減り、家の暖かさを逃がしません。
このすきま風が多いとせっかく暖めた空気が無駄になってしまいます。また、すきま風によって壁内結露という問題も起こります。
これは、すきま風が入ってくるところで、家の暖かく湿った空気が外の冷たい空気に冷やされて、壁の中で結露(水が発生してしまう)してしまう現象です。
壁の中は見えないので、知らず知らずの内にカビが発生したり、木材が腐ったりしてしまい、家の寿命を縮めてしまいます。
気密性能を上げてすきま風を少なくすることで、壁内の結露を減らし家を長持ちさせられます。
3-3. 気密性能を上げるデメリット
気密性能を上げるデメリットは「外の新鮮な空気が入ってきづらい」ことです。
気密性能を上げると自然に入ってくる新鮮な外気が少なくなり、家の空気が汚れやすくなります。
気密性能を上げるのと同時に、しっかりとした換気計画を実施することも重要です。
4.まとめ
今回は前編として、家の住宅性能についてまとめていきました。
後編では住宅性能以外にも、忘れてはいけない家づくりのポイントを紹介していきます。
それでは今回の記事のまとめです。
今回の記事のまとめ
- 耐震等級を取得することで、地震に対する安全性が増す
- 耐震性を上げるためには、間取りとコストを犠牲にする必要がある
- 断熱性能は省エネ性と快適性に大きく影響する
- 断熱性能を上げるには、家のコストアップと窓の制限が必要
- 気密性能を上げることで快適性が上がり、家の寿命も伸ばすことができる
- 気密性能が高くなると新鮮な外気が入ってきづらいので、換気での対策が必要