省エネの真面目なお話

ここ数年、日本各地で異常気象とも思えるような現象が起きていますよね。

日本の平均気温は、100 年あたり約1.19℃の割合で上昇し、世界の平均気温の上昇率(1880~2012年に0.85℃上昇)よりも高くなっています。地球温暖化によるここ数十年の気候変動は、人間の生活や自然の生態系にさまざまな影響を与えています。

たとえば、氷河の融解や海面水位の変化、洪水や干ばつなどの影響、陸上や海の生態系への影響、食料生産や健康など人間への影響が観測され始めています。 そう言った環境問題に対応すべく日本の住宅業界でも対策が進んでおり、二酸化炭素排出量の削減のため省エネ化(省エネ住宅)が進んでいます。

 

そこで今回は日本の住宅業界の省エネ化について説明したいと思います。

 

【省エネ住宅とは?】

日本の家庭のエネルギー消費において、約30%を占めているのが冷暖房だということをご存じでしたか?省エネ性能の高い住宅とは、この冷暖房のエネルギー消費を抑えることのできる住宅のことを言います。

例えば…

冬においては、室内の温かい空気が逃げないことや、夏においては、室外からの熱が室内に侵入しないことなど、少ない冷暖房エネルギーで快適に過ごすことができるような家です。

簡単に言えば『エアコン1台で夏は涼しく、冬は暖かい』という夢のような快適な家が省エネ住宅というわけです。

築8年目を迎える我が家の夏は子ども部屋で2台、寝室で1台、リビングで1台のエアコンがフル稼働しておりますが、エアコン1台で快適な生活が送れるとは…羨ましい限りですね。

 

【住宅の省エネ基準とは?】

そんな省エネ住宅にも基準というものがあります。

省エネ基準には、外皮基準と一次エネルギー消費量基準の2つの項目があります。

外皮基準とは、屋根や外壁などの断熱性能に関する基準です。

二重サッシや高断熱窓、壁に入れる断熱材などを使うことで、エアコンや暖房を効率的に使用することできるので省エネ化に繋がります。

一次エネルギー消費量基準とは、住宅内で資料される家電などのエネルギー使用量に関する基準です。エネルギー効率の良い空調設備や給湯設備、太陽光発電システムを採用することで、エネルギーの使用量を減らし、省エネ化に繋げることができます。

この2つの基準については、2021年4月から省エネ性能の説明が義務化が始まりました。

 

 

【2021年4月から始まった省エネ性能の説明義務とは?】

国土交通省も推進している省エネ住宅は今後益々増えていくことが予想されます。

建築物省エネ法が改正され、2021年4月から一般住宅でも省エネ性能について、建築士から建築主への説明が義務化が始まりました。

建築士の説明義務は、「省エネ基準を満たしているか」と「満たしていない場合は省エネ性を確保するためにどういった処置を取るのか」の2つです。

300平米未満の原則全ての住宅・非住宅で戸建てや小規模な店舗等が対象になります。購入者が説明を希望しない場合は説明不要で、売主や仲介業者などに適用されるものではないそうです。

今後はこのように省エネに対する規制や義務化などが標準化してくることで、住宅業界全体が省エネ化に向けて動き出すようになるでしょう。

【省エネ住宅のメリット】

省エネ住宅は高断熱、高気密、高効率を実現することで様々なメリットを受けることができます。

その中でも魅力的なものの一つとして、夏も冬も温度差の少ない快適な生活ができることではないでしょうか。エアコン1台あれば、冬場のあの底冷えするような寒さや、夏の暑くて寝苦しい夜からも解放されるのです。

さらに築古住宅では冬場などの温度変化によるヒートショックを引き起こす危険性がありますが、省エネ住宅は家の中の温度差が少ないため、ヒートショックを軽減する効果があります。

 

また、高効率にすることで、エネルギーの使用量を減らすことができ、光熱費などのランニングコストを抑えることもできます。省エネ住宅は、健康にもお財布にもやさしい住宅と言えます。

※部屋ごとの急激な温度変化は、血圧が上昇・下降し心臓や脳に大きな負担をかけます。これが「ヒートショック」です。高齢者の場合には、大きな事故につながる可能性があります。断熱性能の高いすまいは「室温差」が解消され、ヒートショックのリスクが低くなると言われています。

【省エネ住宅のデメリット】

省エネ住宅は、メリットの多い住宅ですが、やはりデメリットもあります。最大のデメリットは、コストの高さです。高断熱、高気密、高効率を実現するためには、サッシや断熱材もグレードの高い商品を使う必要があり、家電製品も省エネ性能な商品は高価な物が多いです。

他にも、どれだけ省エネ効果があるのかを計算する必要があり、計算方法によって精度や費用は変わります。また、省エネ住宅は、リフォームでも対応できますが、新築で建てるときよりもコストがかかるため、検討されている方は新築での検討をおススメします。

※最近では省エネに関する補助金も出ていますので、タイミングが合えば上手く使うことも可能です。

ただし、まだまだ補助金制度に対応できる会社も少ないのが現状なので、しっかり事前にヒヤリングしておくことも大切です。

【省エネ住宅にするならいつ?】

国土交通省が発行している「快適・安心なすまい、なるほど省エネ住宅」によると

◆新築時に省エネ基準に適合させるためにかかる費用例約87万円

◆省エネ基準に適合させるための省エネリフォーム費用例約231万円
【内容例/躯体の断熱改修:約125万円、窓の断熱改修:約 88 万円】

と新築時に省エネリフォームをした方が安くなることがわかっています。また、光熱費などのランニングコストや補助金制度などを活用することで、大きなメリットを得ることが可能です。

※【住宅の省エネ改修に要する費用の試算例】国土交通省資料より

◆計算モデルは、 木造戸建住宅(6地域、 延床面積約 120.8 ㎡)を想定

◆省エネ改修に要する費用は、H4年省エネ基準(断熱等級3)に適合している住宅をH28 年省エネ基準

 (断熱等級4)に適合させるための費用

 新築時の掛かり増し費用は、H4年省エネ基準(断熱等級3)に適合している住宅とH28 年省エネ基準

 (断熱等級4)に適合している住宅との差額

澤村知範

この記事を書いた人

澤村知範
オウチの学校代表

これまでの多くの住宅取材経験と自らが建築に関わってきたスキルの集大成として、家づくりの成功メソッド「オウチの学校」を設立。