住宅の性能比較と家づくりに大事な視点(後編)

前編では住宅性能の見方や、その比較方法をご紹介してきました。

ただ、住宅作りでは住宅性能だけが決め手ではありません。

後編では、住宅性能以外にも大事にしてほしい視点を解説していきます。

それでは今回の記事のポイントです。

今回の記事のポイント

・高性能住宅とは災害に対する安心感があり、ランニングコストがお得な家
・高性能住宅のデメリットとして、間取りの制限や初期コストの高さがある
・性能以外にも大事なポイントはライフスタイル・デザイン・コスト
・最後は性能と価値観のバランスを取ることが重要

1.高性能住宅とは

一般的に言われている高性能住宅とは、耐震性能・断熱性能・気密性能がそろった住宅です。

住宅を高性能化することで、生活のしやすさや家のランニングコストに大きく影響してきます。

ここでは改めて高性能住宅のメリット・デメリットについて解説していきます。

1-1. 耐震等級とは

高性能住宅のメリットは以下の2点です。

・地震の後も生活を維持することができる
・家中を快適な温度にできて、光熱費も大幅に抑えることができる

地震の後も生活を維持することができる

等級3などの耐震性の高い高性能住宅では、地震の後も家の損傷が少なく生活を維持することができます。

耐震等級1(最低基準)では、予想されうる地震で倒壊することは稀ですが、そのまま住み続けられる状態かは別です。

2016年に発生した熊本地震では耐震等級1の住宅の約38%が、軽微~中破の損傷を受けています。

逆に耐震等級3の家は2件の軽微な損傷を除き、無被害となっています。

(国土交通省 住宅局調査)

家中を快適な温度にできて、光熱費も大幅に抑えることができる

断熱・気密性能が上がると熱が逃げづらくなるため、家全体を快適な温度にすることができます。

また、熱が逃げないと暖冷房費用も抑えることができます。


出典:旭ファイバーグラスHP

図の一番上が表の中でもっとも高性能な住宅です。

一番上の基準(G2)とH28年度省エネ基準の家を比べると、家の温度は+5℃、暖房で使うエネルギーは約半分になります。

断熱性能を上げるということは、身体にも地球にも優しい家づくりです。

1-2. 高性能住宅のデメリット

高性能住宅のデメリットは、以下の2点です。

・住宅価格が高くなってしまう
・窓や間取りのプランが制限されてしまう

住宅価格が高くなってしまう

高性能住宅を作ろうとすると使う資材が高くなってしまうので、家自体も高くなってしまいます。

現行の一般的な水準(H28年度省エネ基準)と超高性能住宅(HEAT20G2)を比べると、1坪当たり10~20万円程度、高くなってしまいます。

窓や間取りのプランが制限されてしまう

耐震性と断熱性を上げるためには「窓」と「間取り」が制限されます。

家の中でもっとも熱が逃げるポイントは「窓」なので、サイズは極力小さくすることが求められます。

また、耐震性を上げる為には家の構造(柱や壁など)をバランスよく配置する必要があります。

壁の無い広い空間を作ってしまうと耐震性が落ちてしまうので、間取りが制限されてしまいます。

1-3. 高性能住宅が向いている人は「〇〇な人」

高性能住宅が向いている人は「建てた家で長く、お得に過ごしたい人」です。

高性能住宅は、地震などを乗り越えて住み続けられる強さがあります。

価値観として、同じ家に長く住み続けたい人には大事な視点です。

また、住んでからお得に生活したいという人にも向いています。

断熱性能の高い家は、光熱費が大きく抑えられます。

建てる時の費用は高いですが、毎月発生するお金はお得に抑えられます。


出典:パナソニックビルダーズグループHP

最近では住宅ローン総額と光熱費総額を足した、支払総額をシミュレーションしてくれる住宅会社が増えてきました。

一般的な住宅と高性能住宅で、どちらが月々の支払いが少ないかを比較しながら検討が可能です。

2.家づくりにおける大事なポイント

ここまで家の性能面で解説してきました。

しかし家づくりにおいてはほかにも重要なポイントがあります。

ここからは性能を考慮する前に検討してほしい、家づくりでの大事な視点を解説していきます。

2-1. ライフスタイル

まず検討してほしいことは、もっとも家のプランに影響する、ライフスタイルです。

・家族構成は何人くらいか?
・在宅での仕事はするか?
・家にいる時間は長いのか?短いのか?
・リビングは食事の為だけか?家族全員でくつろげるスペースが必要か?

など、家のプランを検討する際には住宅性能の前に、家が希望のライフスタイルを実現してくれるかが重要です。

住宅会社を選ぶ際には、まずはライフスタイルを想像して、希望のライフスタイルを実現してくれそうか?という視点で検討してみましょう。

2-2.デザイン

デザインも家づくりの大切な要素です。

窓の取り方や、吹き抜けの有無など、家の間取りを含めてデザインする内容は、建ててから変更できないため、よく検討しましょう。

デザインの項目には下記のものがあります。

・間取り、窓のサイズ
・内装、外装の仕上げ
・作り付け家具、照明など家に固定されているもの
・家具家電、観葉植物など置き型のもの

上から重要な項目になってきます。

検討する際には予算などの優先順位を決めながら、検討するといいでしょう。

住宅会社選びの際には、過去の物件事例などで好みの家があるかを確認するのはとても重要です。

2-3. 住宅の購入費用

次に検討してほしいことは、住宅の購入費用です。

住宅に関わるお金の話で、最初に越えなければいけない壁は「住宅ローン審査」です。

高性能住宅は住宅ローンと光熱費を含めた毎月の支払いが、一般的な住宅よりも安くなることが多いです。

しかし最初の購入費用が高く、住宅ローンが通らないことがあるので、高性能だけを追い求めては家が買えなくなってしまいます。

とくに土地を同時に購入する際は、住宅ローンが厳しくなることが多いので注意が必要です。

3.性能と価値観のバランス

ここまで「住宅の性能比較」と「家づくりの大事な視点」について解説してきましたが、

ぜひ大事にして頂きたいのは、性能と価値観のバランスです。

安心安全で費用も安い家というのは、誰もが求めるものでしょう。

しかし、それが一番大事か?というと、そんなことはないと思います。

例えば「リビングは家族全員が一緒にくつろげる場所にしたいから広くとりたい」という要望が強ければ、耐震性能よりもリビングの間取りが優先されるかもしれません。

他にも「壁一面に大きな窓をつけて外の景色を目いっぱい取り込みたい」という要望があれば、断熱性能よりも窓の大きさが優先されるかもしれません。

性能がいいことは大前提ですが、他に大切にしたい価値観とのバランスを取ることがもっとも大事なことです。

4.まとめ

今回は、住宅の性能比較と家づくりに大事な視点という内容で解説させて頂きました。

住宅会社選びで悩んだ時には、家づくりで大事な価値観を固めながら、住宅性能という比較しやすい部分で選ぶといいしょう。

それでは今回の記事のまとめです。

  • 高性能住宅とは災害に対する安心感があり、ランニングコストがお得な家
  • 高性能住宅のデメリットとして、間取りの制限や初期コストの高さがある
  • 性能以外にも大事なポイントはライフスタイル・デザイン・コスト
  • 希望するライフスタイルやデザインによっては住宅性能が落ちることがある
  • 高性能住宅は購入費用が高いため、買える範囲で検討することが大切
  • 住宅性能が絶対ではなく、それ以外の価値観とのバランスを取ることが重要
澤村知範

この記事を書いた人

澤村知範
オウチの学校代表

これまでの多くの住宅取材経験と自らが建築に関わってきたスキルの集大成として、家づくりの成功メソッド「オウチの学校」を設立。